水色見本帖
2022.09.19 Monday
飲んだお茶の記録をSNSで取ってきましたが、昨年末よりお茶を「彫刻」や「絵画」と
見立てる、また味覚と視覚の領域をクロスさせるような視点を持つことは可能か?
と、考えるようにりました。
頭を整理するためテキストを書いておきます。
今後どのような形式でまとめるかは、もう少し考えてみたいと思います
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水色見本帖
パンデミックで家にいる時間が増えて、段々と色々な種類のお茶を試すようになった。
煎茶、ほうじ茶、紅茶、釜炒り茶、烏龍茶、普洱茶、そして抹茶。
お茶にはカフェインが含まれていて、気分を変える効果がある。
お茶は香りを楽しみ舌で味わう嗜好品で液体なので形がない。
それで視覚で何が抽出できるかと言えば、当然「色」なのだ。
茶の抽出液の色彩は水色と書いて「すいしょく」と読む。
ガラスの耐熱カップに入れた茶は午前中ならニュートラルな色で撮れる。
この水色(すいしょく)は茶の製法により違ってくる。
大雑把に書くと茶は酸化発酵させると水色に赤みが入る。
烏龍茶など多少の酸化ならオレンジ色になるし、完全に酸化させた紅茶は紅い。
普洱茶に代表される黒茶は酸化発酵ではなく微生物に発酵させている。
(本来の意味での「発酵」)
それに対して煎茶や抹茶、中国や台湾の緑茶は発酵させない。
白っぽかったり黄色いあるいは鮮やかなグリーンのお茶。
ややこしいのはほうじ茶だ。ほうじ茶は発酵ではなく、酸化重合により茶色くなっている。
また、水色は湯量や茶葉の量とのバランスでも濃くなったり、薄くなったりする。
それはさておいて、地球上のいたるところで人類は茶を愛好してきて、この色を長い時間をかけて眺めてきた。
その水色を記録する。
画面の1/3~1/2くらいのスペースに茶を納めて、菓子にピントを合わせ、
水色をぼんやりとした色面として扱うルールを決めて、淡々と試行錯誤を進めていくうちに
ある抽象絵画が気になった。
モーリス・ルイスの<ヴェール>のシリーズだ。
MOMA所蔵 《あずき色》
このシリーズは絵の具を画面の上から絵の具を何重にも垂らしていく技法で作られていて、
画面の上で絵の具が混じり合って微妙な色が出現している。
小学校や中学の図工や美術の時間に絵の具を使った時に、バケツで筆を洗ったことを思い出してほしい。
複数の色を洗った後のバケツの水の色、何とも言えない赤茶色を。
あらゆる絵の具の色が混じり合うと、茶色っぽい色になる。
そのような原理を使ったあずき色の絵が上の画像だ。
絵の具が混じり合うことで、それぞれの色がお互いを食い合い茶色となる。
それに対して、カメラが捉える水色はRed,Green,Blueの3色の光の重なりで出来ている。
RGBの光を集めた水色を、物質としての絵の具の色と対比させて見れないだろうか。
と片目で意識しつつ考えながら作ることを試みている
斎藤ちさと