2022個展での「拝見」の問答メモ
2022.12.30 Friday
「気泡 ケ 藝術」に展示した作品は
築地の勝どき橋付近と豊洲の豊洲大橋からの風景を2期に分けて撮影したものです。
・2018年1~3月
・2021年1~3月(確認したら展示した作品はほとんど3月のもの)
5年築地で働いていたのですが、働き始めの時期がちょうど豊洲に移転するしないで
もめている渦中でした。
そうこうしているうちに汚染土の問題も出たりして、ここまでになったら行けないね。
とスタッフの間で話していたのですが
「来年の秋に無理やり行ってしまうらしいよ」という情報が(なかなか信じられなかった)
2017年の年末でした。
場内がなくなってしまうなら築地を撮っておこうと、年が明けた1月から撮影を開始。
週に3日の非正規の契約だったので、
仕事のない日にカメラと水槽を抱えて改めて築地に通いました。
寒い季節は毎日築地にいた気がします(笑)
この気泡シリーズは光が弱くないと球が綺麗に撮れないので、野外で撮影する時期は
冬から春。
それも天気の良い日ではなく曇りや雨の降る直前など光が拡散しているのが条件。
といっても、家を出る時に曇っていても現場に着いたら晴れていることも多々あり
そんな時は翳ったタイミングを狙います。
勝ち鬨橋の周りは、川の水面の反射と迫って立っているビルのガラスが反射しあって
光が絶妙に拡散しているエリアで、このシリーズの撮影に関してはベストだと言える
光が得られるのが、愛着のある土地である以上に足繁く通った理由です。
また、1・2月と3月は光が全く変わるので同じ場所で同じやり方でも、
違う絵が撮れるのも面白かった。
まさに一期一会の光と言ったところでしょうか。
1、2月は空気が澄んでいて光が鋭く、全体が水色に、
3月は春一番の嵐や黄砂や花粉が飛散して、光が柔らかく霞んだ絵が撮れます。
第2期は2021年で少し時間が開いています。
この間、持病が悪化して手術(2018年10月)したのが思いの外大掛かりで
身体にダメージがあり、2年弱カメラが担げなかったことから
手描きのドローイングで映像を作りました。
2019年の秋に増税が実施され築地から(日本人の)お客さんがザーッと引いて、
直後にコロナ禍がやってきて仕事が休職に、2021年の春に退職となりました。
休めて身体が回復できたのと時間が空いているのを幸いと再び
空になった築地と今度は移転先である豊洲を撮影しました。
2021年撮影分で今回展示したのは3月に撮影したものが多いです。
そして興味深いことに、築地では2018年と同じ場所で撮影していますが、
2021年に撮影したものは霞んでいながら色が鮮やか。
同じ場所、同じ季節、同じ撮り方なのに違うのです。
どうしてだろう?
とずっと思っていましたが、ある写真家の方と話している時に
「コロナ禍の影響では?」
という話になりました。
撮影を行った前年2020年は地球全体で人類の活動が感染症対策で制限されました。
人類が活動しなかったことで、海や山が綺麗になり環境問題が改善されたという
報告があったことは記憶に新しいと思います。
大まかに
・2018年1・2月→水色
・2018年3月→スモーキー、パステル
・2021年3月→スモーキーだが鮮やか
このシリーズは野外では逆光で撮影するので、炭酸の中に混入している
埃が画面に無数に写ります。
その埃をレタッチして消していますので、
かなり手を入れることになるので、真を写す「写真」と呼んで良いか迷うところです。
しかし、コントラストを増幅させているので不思議な色は出てきますが、
私が着色したものではなく、カメラが拾った色です。
合成はしませんし、ない要素を付け加えることはありません。
同じ場所同じ撮りかたで違う色や絵が出てくるのは、
時々の大気や光の変化を捉えていることになるので、
昔の写真の呼び方「光画」という意味であれば気泡シリーズは「写真」である。
と言って良いのでは?と考えを改める機会ともなりました。